ECRAという米国の法律の怖さを知るべきですよね

徒然なるままに

 

 米中貿易戦争が勃発していますが、
この戦争は、新たな冷戦構造であると同時、
単純に、貿易不均衡の改善交渉という局面だけではありません。

先端技術の覇権争いがこの戦争の背景にあります。

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ファーウェイの女性副社長が、
カナダで米国の要請により身柄を拘束されています。
また、ファーウェイやZTEの通信機器を政府調達禁止対象としました。

同時に、
関係各国にも同様の措置を求めて、
これらの通信機器を利用した国とは、
取引を排除することを求めています。

これらの一連の事案は、日本も無関係ではありません。
今後中国との連携を模索している日本企業は、
より慎重な対応が不可欠ということです。

ここで、着目したいのは米国の具体的な政策です。
2018年8月13日、安全保障の観点に立った対米投資規制と、
輸出管理規制に関する2つの法律が、
トランプ大統領の署名を経て成立したことです。

外国投資リスク審査現代化法
(Foreign Investment Risk Review Modernization Act、FIRRMA)、
輸出管理改革法(Export Control Reform Act、ECRA)の2つの法律で、
2019 年度の国防予算に関するジョン・マケイン国防権限法
(John S. McCain National Defense Authorization Act of FY2019)の一部を構成する形がとられました 。

他の歳出法案と異なって採決の年度跨ぎが許されない国防権限法の中に 、
FIRRMA・ECRA が統合された事実は、
2 つの規制に対する関心が超党派の広がりを持っているとみなすことができます。

この2 つの法律に共通するのが、
軍事利用も可能な最先端の民生技術が、
安全保障上の懸念がある外国に流出することへの強い懸念です。

中国に対する懸念は、
FIRRMA・ECRA をパッキングした国防予算パートにも表れています。

トランプ政権の対中国戦略には、
もはや技術分野に留まらず、米国のメディア等、
幅広い分野に対する中国の働きかけに焦点が当てられているのです。

・連邦政府調達禁止項目と政策

 ファーウェイ及びZTE 製の通信機器及びサービス
 ハイテラ、H3C テクノロジーズ、ダーファ製のビデオ監視・通信機器及びサービス
 中国政府関連企業の提供する通信機器及びサービス・連邦政府全体にわたる対中戦略の策定
米国及び同盟国、パートナー国の国防・安全保障に重要な意味を持つ、中国による産業上の買収、政治的影響、地域及びグローバルな軍事的能力への対応・その他の対中政策
 中国のRIMPAC 参加禁止(参加には、国防長官による禁止条項の免除が必要)
 南シナ海における中国の軍事的、高圧的活動の報告書の策定
 中国の軍事・安全保障動向に関する報告書の見直し(米国のメディア、文化組織、企業、大学、政策コミュニティへの影響、グローバルな安全保障・軍事目的を有する略奪的貸付を含む非軍事的手段の利用)
 孔子学院による中国語講座、中国語による大学講座への国防予算の制限

米国の対中警戒感の高まりが技術分野に限ったものではないことは、
ペンス副大統領の「対中政策演説」(2018 年 10 月 4 日)でも示されています。

同演説の冒頭には、米国の対中政策が大きく変容していることが表れています。

米国では「中国はいずれ変わる」という楽観的な幻想を捨て、
いわば性善説に立つ対中政策からの見直しが急務とされているのです。

ペンス副大統領の演説は「新冷戦の始まり」と評される由縁です。

従来の対米投資規制では、「外国人による米国事業の支配」に監視の重点が置かれてきました。

その結果、重要な技術を有する米国企業に対する非支配的投資によって一度審査をパスした外国人が、
その後、累積的に権益を獲得し、当該企業の支配権を牛耳ったり、
空港・港湾施設やその周辺不動産を外国人が獲得し、
米国の軍事・機密情報を諜報しようとすることを米国は防げませんでした。

この抜け穴を防ぐための法律が FIRRMA・ECRAということになります。

中国から資本や経営陣を受け入れている日本企業は、
米国事業の買収や米国内の不動産の取得、
米国企業が有する「最先端技術及び基盤的技術」へのアクセスなどが、
難しくなっていくとみられます。

さらに、
輸出管理規制の対象として「最先端技術及び基盤的技術」が新たに指定されれば、
当該技術に関わる対中国戦略の抜本的見直しを迫られるおそれがあります。

中国企業等への「最先端技術及び基盤的技術」の技術移転には、
米国商務省による輸出許可が必要となるためだからです。
加えて、
ジョイントベンチャー等を通じて申請された
「最先端技術及び基盤的技術」の輸出許可の審査では、
当該ジョイントベンチャー等の取引主体である外国人のみならず、
「当該外国人に対して相当の権益を有する」外国人についての情報提供が求められます。

日中の民間企業間で締結されたジョイントベンチャー等で、
中国企業が中国政府の指示下にあるとみなされれば、
「最先端技術及び基盤的技術」については輸出許可が下りないおそれがあるのです。

日本は2017年、外為法改正により対内投資規制を強化していますが、
米国は、対米投資規制や輸出管理規制の一層の調和を求めてくるとみられます。

更に、日本が対応の遅れが心配されるサイバー攻撃対策上も中国企業は要注意です。

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中国の企業は、中国情報法の下で、中国政府の情報提供の要請を
拒否することはできないということです。

民間技術であろうと軍事に必要ならば、情報提供を拒否することはできません。
また、中国共産党の要請により、他国の政権のスキャンダル情報等の収集にも
加担せざるを得ないということです。

また、米国のトランプ大統領のロシア疑惑が
大統領選挙にロシアが関与していたのではないかとの事件でした。

しかし、中国もこのサイバー攻撃体制を利用して、
他国の選挙への干渉も行われている可能性もゼロとは言えませんよね。

何はともあれ、米中貿易戦争を「対岸の火事」とするのではなく、
当事者としての対応が必然ということです。

 

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